介護に子育ての問題は色濃く出ます

 親御様への介護の責任を子が持つとき、それまでの子育てのあり様が問われます。少なくない人が、これを判っていないように見受けます。

 介護で子が親に暴力を振るったり、親が亡くなった後の相続で揉めるのも、親子関係でお互いに、愛着がべったりと張り付いたままなのが原因です。

 思い当たりませんか?

 多くの親御様は、子に対して愛着たっぷりに育ててしまいます。間違っていないと思われるかもしれませんが、かつて両親が私にしてくれた子育ては溢れんばかりの愛に満ちていました。

 おそらく、愛着と溢れんばかりの愛の違いの区別をご存じなく子育てしているのでしょう。

 もし、その区別をつけて子育てをしたのであれば、親御様の介護なんかまっぴらごめんだな、と思う子はいなくなります。

 一例として、狐の子育てを観察しながら、愛着と溢れんばかりの愛の違いを知り、愛着を手放さないとろくなことにならない現実を知りましょう。 

もくじ

愛着と溢れんばかりの愛の違いがさっぱり判らない

 親子の関係を観察していると、お互いにべったりと愛着を貼り付けてしまっているとしか表現しようがない状況をよく目の当たりにします。

 しかし、時は流れ、親御様の介護のタイミングが迫ると、家族の人間関係にさまざまな問題が露呈します。

 愛着をお互いに貼り続けてしまうのが、その原因なのですが、親も、子も、その人間関係にある愛着がなんなのかを判っていません。

 そのため、高齢になる親御様への暴言や暴行、また親御様の介護から逃げていく子が実に多いのが現実です。

 ところで、野生の動物は、子育てに失敗すると思いますか?

 ぜひ、地球を俯瞰してみてください。

 子育てに失敗する生命は、比較にならないぐらい人間様がダントツに多いです。

 その理由を野生の動物の子育てから学んでみましょう。

動物は子育てに失敗しない

 いつ頃だったのか記憶は忘れましたが、野生の狐の子育てをフィルムに収めたドキュメンタリーを見ました。

 親狐は、子狐に餌を与え、少し大きくなると獲物の取り方を教えます。

 その懸命な姿に、親の大変さは人間も、狐も変わらないなぁ、という感想を持ったのを覚えています。

 でも、子狐が大人になりつつある頃です。

 現代の人間の子育てと比較して、明確な違いが生じます。

 親狐は、ある日、突如として心を鬼にしたかのように子狐を突き放します。

 子狐は、何度も親狐のもとに駆け寄り、甘えようとします。

 しかし、親狐は決してそれを許しません。

 子狐が親狐に駆け寄るほど、親狐の突き放し方も、ますます過激になります。

 凄まじい勢いというのは、このことかと思わせるものがあるのですが、やがて子狐はあきらめて親元を去っていきます。

 これは、狐に限った話ではありません。

 そうしなければ、野生の動物たちは、厳しい自然界で、弱肉強食の世界で、生き残っていけないのです。

 これが、自立のあるべき姿です。

 動物にとって子育てなんかで失敗するようでは、恥もいいところ。

 今、この瞬間、死と隣り合わせなのですから。

 野生の動物は、ナチュラルにそれを理解しています。

では人間の子育てを観察してみましょう

 親狐は、冷たい、人でなし(?)な行動でしょうか。

 違いますよね。これこそが、溢れんばかりの愛のあるべき姿です。

 では、翻って、以下の記事で紹介した高齢の男性が、かつてどんな子育てなさってこられたのかを少し想像してみます。

 おそらくは、愛情をいっぱいかけて、そしてご苦労をなさって子供を育てたのだと思います。

 そして、子供は、親も顧みずに成長され、どこかで自立されて、生活されているんだと思います。

 この競争社会で生き残りをかけて、毎日を頑張っていらっしゃるのでしょう。

 もちろん、自立以上に力を発揮して、年老いた親の面倒を看るくらいの気持ちと気概があっても良いかもしれません。

 しかし、それは子が自らの力で気づき乗り越えるべき課題であって、親として、それを望むとすれば、それが期待であり、イコール、愛着です。

 これまで育ててきたのだから、子は親の思い通りになる、介護をしてくれるといった妄想や期待。

 それが愛着の正体です。

 愛着は裏切られるのが相場です。

 苦しむのは当然です。

 ですから、そのご高齢の男性もお元気で、資力もあるなら、相応の施設に入る選択も良い選択のひとつです。

 ただ、その選択以上に重要なのは、ご高齢の男性も親の役割を終えるケジメをつけた決断を誇りに思うところです。

 子への愛着を手放す決断が出来たのですから。

 なので、私は良い判断だったのではないか、と岳母にコメントしたわけです。

 どう子育てをしたのか?

 その影響は、時が流れて、親御様の介護が必要になった時に結果が返ってきます。

 愛着で育てたのか?

 それとも、あふれんばかりの愛で育てたのか?

 親狐の子育ては、そうしなければ子狐は野生で生き残れなくなる運命を避けるためのあふれんばかりの愛に満ちています。

 我が子を思えばこそ、心を鬼にして、親は子の自立を促す。

 私も、両親からそう育てられました。

 だからこそ、両親への尊敬と恩を常に携え、介護をさせてもらったことに感謝が出来るようになります。

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