時代が変われば介護も変わる

 介護を考える上で、まずやらなければいけないのは、親は子供への愛着を手放す。岳母の支援が始まった当初はそのお話を頻繁にしました。

 そのうえで、これからの介護はどう変わっていくのか。

 そもそも、在宅介護の主役は誰か?

 ご高齢の親御様への介護に対する見方を、岳母と一緒に広げていきました。

もくじ

そもそも施設には行きたくない

 私が、実母の介護を終え、葬儀を執り行ってからしばらくたった頃です。

 お世話になったケア・マネジャーにお礼を伝えようと思い、会いに行きました。

 そのケア・マネジャーは女性だったのですが、実母がお世話になっていた頃と比べて、会ったその日は、少し雰囲気に明るさが減っていたように感じましたが、気にも留めませんでした。

 私が、実母がお世話になった介護スタッフの献身ぶりに改めて感謝を申し上げたところ、そのケア・マネジャーの本音をはじめて聞きます。

ケアマネ

さくらさん、お礼をいってくれるのは、有難いと思っています。

でも、もし、さくらさんだったら、高齢になって、介護施設に行きたいと思いますか?

私は、まったく思わないですね。

 実母の在宅介護では、週に3日程度、デイ・サービスを利用させてもらいました。

 実母は、とても社交的で、家にいるより外に出かけていきたい性格でした。

 実母が長年過ごした地元に近いデイ・サービス施設だったということもあり、旧友との出会いや、新しいお友達を作っては楽しんでいました。実際に、何十年ぶりに再会する実母のお友達は、私も存じ上げていた方もいらっしゃったものですから、デイ・サービスのある生活は充実したものになりました。

 なので、ケア・マネジャーのその言葉は、ネガティブに胸に刺さるものがありました。

 実母の楽しんでくる姿や、施設で起きた出来事を事細かく話してくれるのを聞いて、私の母に限っては施設に行きたくないという気持ちを一度も聞いていません。

 そのため、思いがけない言葉だったのをよく覚えています。

 同時に、実母の気持ちしか知らなかったため、他の高齢者の方々の気持ちは実際にはどうなんだろうか?

 そのような疑問も、脳裏にすぐに浮かびました。

 私事で恐縮ですが、私は、知りたいことを徹底的に調べ、納得するまで行動するタイプだと改めて思ったのですが、急遽、初任者研修を受け、介護施設で働かせてもらうことにしました。

 短い期間でしたが、介護サービスの仕事に従事してみて、多くのご高齢の方々の気持ちや、そのご家族の気持ちを見聞きしました。

 実際に介護サービスの現場に立ってみれば、その答えはすぐに判るものですね。

 かつて、実母の介護でお世話になったケア・マネジャーのフレーズは、ほぼ間違っていない、と思えるものでした。

 私の実母だけが、若干、例外的に楽しんでいたようでした。

 そういえば、初任者研修の受講の際に、研修講師の言葉が色濃く思い出されるので、そのフレーズを紹介します。

講師

施設に来ている高齢者の方は、お家で厄介者と思われて来ている人が多いので、優しくしてあげてください。

 皆さんは、このフレーズを聞いて、どう思われますか?

 私は、最初は半信半疑でした。

 しかし、現実はその通りと言わざるを得ない状況です。

青天の霹靂

 ご高齢の親御様がご自宅で子供から厄介者に思われ、施設に行きたいとは思っていないという現実は、いまでこそ、理解しています。

 ただ、実母の介護に取り組んでいた当時の私にとって、世の中の介護をとりまく状況を見渡せていなかったとも言えます。

 お世話になったケア・マネジャーの言葉は、青天の霹靂なみの驚きがありました。

 私は、実母の在宅介護で、母に対して、よくこんな言葉をかけていました。

わたし

精神的支柱として、頑張ってください!

 岳母の支援でも、その気持ちに全く変わりはありません。岳母は、たまに弱気な発言があるので、すかさず激励です。

わたし

馬鹿なことを言ってないで、精神的支柱として、堂々と頑張って生きることを考えてください!

 岳母の支援をしていた当時、実母も、岳父も、亡くなっていましたが、だからこそ、岳母にはまだまだ元気でいて欲しい思いしかなかったので、私にとってはこれが当たり前でした。

これからのご高齢の親御様への介護

 今は、2024年です。

 コロナ禍が過去の出来事になりつつありますが、未来を見据えた10年後、その時の高齢者は、今の高齢者とは、まったく異なる世代になっています。

 私の見解ですが、これからの介護サービスは、本当に支援が必要な人に向けた、より専門性の高い、心をしっかりと見つめられる高度なケアが提供される内容になっていくはずです。

 認知症を発症しても軽度であれば、家族一緒の生活で、その営みの中でしっかりとケアする方が良いといった風潮にもなってくるでしょう。

 コロナ禍で経験したように、働き方、雇用のあり方、法律、制度により柔軟性が出てくればそれも可能になります。

 幼児を連れて出勤できる企業もあるのですから、高齢の親御様を連れて出勤できる企業も出てきたって面白いじゃないですか!

 というよりもこれからの高齢の親御様の介護は、認知症をはじめとした健康悪化により、要介護にならないようにする生活姿勢が、より一層の主流になります。

 このことは、別の記事で紹介していきますが、これまでの在宅介護の経験も踏まえて、岳母の支援で私が注力しているのがまさにここでした。

 要支援、要介護となるから介護の大変さが生じたり増したりするわけで、そうならない取り組みが必須です。

 一方で、介護施設の身売り、買収、縮小、廃止の動きもよく耳にします。

 介護サービスの作業だけを提供すればよい時代は終わり、洗練淘汰の波が押し寄せているのも、次代の幕が開いている証左です。

 ただ、ここで問題となるのは、高齢になっていく親が重荷としか思われない状況が、旧態依然として横たわり続ける現実です。

 この課題へのアプローチをしてみようと思います。

 そもそも、ご自宅での在宅介護の主役は誰か?

 私の答えは、親御様の介護をする子供

 この人達が主役です。

 在宅介護は、実は担う人が主役です。

 もちろん、介護されるご高齢の親御様がいらっしゃって、初めて成り立つ役割です。

 しかし、在宅介護を終了した時に、親御様はこの世界に存在しません。在宅介護を完遂した成果、果実は、親御様の介護の責任を果たした子に宿ります。

 ご高齢の親御様への介護サービスは、昔に比べると充実しています。しかし、親御様が要支援、要介護と認定されないと、リーズナブルに利用できません。

 でも、私は思うのです。

 コンピューティング、デジタル、ネットワーク、そしてインターネットがネイティブに近い、今の50代の年齢の人たちが更に高齢になった時、今の介護サービスが必要とされるか否か。

 もしかすると、必要とされくなっているかもしれませんね。

 私には、今とはまったく違う長寿社会のヴィジョンがあります。

 追々、ご紹介していくつもりです。

 

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