なぜ介護休業は取得しにくいのか?

 40代~60代のサラリーマンで、年老いた親の介護に直面して、初めていろいろと調べるのが介護の世界ではないでしょうか?

 親も元気、自分も元気なうちは、介護の世界は他人事だったはずです。そして、年老いた親御様の病状、例えば認知症を取り上げてみても、初めて直面するその症状に驚くはずです。

 そのような精神状態で、親御様の介護の見通しと、自分のキャリアの両立など、考えられるはずはないですね。

 なので、介護休業すら上手に取得できません。

もくじ

介護休業の捉え方

 私が解説するよりも、介護休業制度については検索すれば懇切丁寧に説明してくれるサイトはたくさんあるので、そちらを参照してください。

 しかし、そのような詳細なサイトでも、介護休業制度を「どう活用すればよいのか?」、この視点を解説してくれる情報は極めて少ないのが現状です。

 介護休業制度を調べたとしても、その内容に物足りなさを感じるのは、そのせいです。

 私のサイトでは、ここにフォーカスしています。

 では、なぜ、そのような物足りなさが生じているかと言えば、理由は次です。

  1. そもそも介護休業制度を活用した人が少ない。
  2. 介護休業制度を積極的に勧める企業も少ない。
  3. 企業や人事部で在宅介護を経験した人がいないので、制度の意義が判らない。
  4. 企業の福利厚生の一環として育児・介護を同じ括りで扱い、単なる休暇取得制度としか思えていない。
  5. 介護休業を活用しても、その活用方法に対する知見の共有が乏しい。
  6. 介護休業制度の取得日数が中途半端に思えてしまう。

 まだあるように思いますが、これぐらい列挙すれば十分でしょう。

 そもそも、この制度は93日間の休業が申請できて、休業中も賃金の67%が保証されます。

 一方で、行政によるこの制度の建付け、その制度をどう利用すればよいのか、なぜ、その日数なのか、その意図があります。

 介護休業制度は、93日を上限にしていますが、親御様が認知症に罹患したような場合、介護する日数が93日ではとてもじゃありませんが、足りません。

 つまり、介護休業制度は、親御様の在宅介護そのものを支援する制度ではないのです。

 狙いとして、親御様に介護が必要になった場合、その後に続く介護をどのようなやり方で進めていくのか、その方針、方向性を従業員の家族、家庭で決めてもらう期間として定めているのが骨子です。

 この骨子なので、従業員には、介護休業を取得した後に職場復帰を期待されています。

 とはいえ、先にも書きましたが親御様が認知症に罹患した場合、職場復帰を前提に介護休業を取得したとしても、すぐさま介護離職を余儀なくされれば、会社に迷惑がかかると考えるのが多くの日本人でしょう。

 そのため、親御様が認知症に罹患すれば、介護休業を選択せず、すぐに介護離職を選択する人も多いのです。

 結果として、年間10万人弱の人が介護離職をしています。

 これでは、制度そのもののが、あまり活用されないですね。

介護休業を賢く活用するために

 まず、介護休業の取得要件には、親御様に介護が必要だ、というのが前提になります。

 実は、この考え方をしているうちは、介護休業は非常に取得しにくいものです。

 というのも、いざ介護が必要だ、っていう段階になって介護の世界を初めて覗いたところで良く判らない、という現実に直面するはずです。

 そもそも、要介護に認定されて、初めて無料でケアマネに相談できます。

 その要介護を認定されるにも、早くて数週間から1カ月を要します。

 認知症を患った親御様は徘徊する恐れもありますから、そこから介護休業を計画するといっても意味がありません。

 つまり、介護休業を取得するためにも、親御様に介護が必要になる前から、ケース・スタディを重ね、経験値を企業内に蓄積していく。

 これを企業と従業員が協力して執り行っていく時代を迎えています。

 企業と書きましたが、従業員だけでなく、社長も、役員も、親御様の介護は取り組むべき課題として生じる人生の大切なイベントだと認識するべきなのです。

 企業内に蓄積された、介護情報は、後々の財産になるのは間違いありません。

 なぜなら、その財産が介護に直面した優秀な人材を失わせません。

もし親御様が認知症を患ったら・・・

 まだ在宅介護経験が無いうちは、想像もできないはずです。

 徘徊、作話、便コネ、入浴拒否、食事拒否、せん妄、・・・。

 自分の親がそうなるなんて、想像もできないですよね。

 問題は、その想像ができなくても、介護する人の立場がどのような生活を余儀なくされるのか。

 ここをよく知る必要があるのです。

 結論から言えば、介護離職しなくても済むように、老いて、病に罹患して、亡くなるまでのプロセスで、介護する子のライフスタイルがどう変遷するのか?

 ここをケース・スタディする必要があります。

 親御様が罹患する病は、認知症だけではありません。

 癌をはじめ、その他の疾患も抱えるはずです。

 転倒して、怪我もします。

 このような親御様の状況に対処、対応し、介護してきた子の経験に耳を傾け、その経験を企業内に蓄積する。

 従業員が将来的に介護に直面するであろうことが容易に想定できる事前のタイミングにおいて、企業が従業員のサポートを始める。その取組みが、企業にとっても従業員にとっても、意義のある介護休業の取得、そして介護離職の防止になります。

 社長にも親御様がいらっしゃいます。

 もし社長が親御様の介護を経験すれば、その重要性を理解され、企業は強くなるでしょう。しかし、激烈な社内競争を勝ち抜いて、社長ポストを得た人にとってはどうでしょうか。もしかすると、ご自身の親御様の介護は、頭を抱える厄介の種になるのかもしれません。

 逆に言えば、社長ご自身が親御様の介護のご経験を披瀝すれば、その魅力はよりよい人材の求心力にもなります。

 例えば、2025年10月に就任された高市総理も介護経験をしながら、総理大臣職を務めていらっしゃる話はよく取り上げられ、好感をもたれています。

 求められているのは、この着眼点です。

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