親と子で協力して家庭を築く

 核家族化が一般的になった現代では、家庭を築くというと、ご夫婦が子供を育てるイメージが一般的です。

 一方で、≪ 介護を必要としない介護 ≫を実現する上で構築するご家庭は、そのイメージとは異なってきます。

 ご高齢になる親御様と、介護する子で力を合わせて家庭を築いていくイメージです。

 親も、子も、このイメージへの積極性が問われるのが在宅介護の真の姿です。

もくじ

親と子で力を合わせるご家庭のイメージ

 かつては、各世代が一緒の大家族の中で自然と成り立っていましたが、核家族化が進んだ現在では、意識していかないと在宅介護のある家庭を築けません。

 ましてや、≪ 介護を必要としない介護 ≫を実現するご家庭を実現するのは難しいでしょう。

 親と子で力を合わせて助け合って生きていく、そんな一例を紹介します。

 岳母のお母様、私からみれば祖母にあたる人ですが、100歳手前まで長生きをされたと聞いています。

 亡くなるまでお元気で、認知症とも縁がなく、子供たちと一緒になって農作業に携わっていたそうです。

 農作業も、たった一人でなんでもかんでも出来るわけではなく、農家のご家族みなで力を合わせて、やっと一つのお野菜ができ、出荷され、食卓に並びます。その祖母は、100歳近くになっても、育てた野菜の出荷を担当されていたそうで、袋詰め作業を誰よりもスピーディに丁寧にこなしていたと聞きます。

 ここにご家族の中で祖母を介護しているという印象は無いと思います。そうではなく、ナチュラルに、親と子が、力を合わせて生活しているのが想像できると思います。

 親と子で力を合わせてご家庭を築くイメージは、この姿です。

介護は助け合い

 第二次世界大戦後、日本でも個の尊重が叫ばれ、助け合いの精神という言葉は陳腐化しているかのようです。

 人は健康なうちは、助けられて生きている実感など忘れているかのように、高慢さに呑み込まれて生活します。

 かりそめの平和な環境もまた、その成り立ちを忘れれば忘れるほど、人の身勝手さが助長された生活環境へと成り果てます。

 結果、≪ 介護 ≫という言葉を聞くと、親が認知症を患ったおかげて子にそのお世話の負担がのしかかる、といった印象しかまかり通らない世の中になっているかのようです。

 しかし、それは大きな間違いです。

 介護の基本は、年老いた親御様と子による助け合いです。

 親は、老いて病となり苦しい状況に置かれ、死が迫りつつあっても、それが生きるという真の姿を理解し、子に示し、そのお世話を通じて、子は理性を伸ばす機会を与えられ、発揮できる場を得る。

 助け合いは、このように常に双方向で成長する機会です。

 これを看破できなうちは、お世話されるほうは申し訳ないと思い、お世話するほうは負担にしか感じません。

謙虚さの勘違い

 ≪ 介護を必要としない介護 ≫を実現する上で、改めていただきたい意識があります。

 岳母もひとりでの生活が始まった当初に仰っていたのですが、次のフレーズに集約される意識です。

岳母

子に介護をさせるのは申し訳ない・・・

 これが謙虚さに聞こえるフレーズだとしたら、大間違いもいいところです。

 このフレーズを言葉にする心のあり様が、如何に≪ 傲慢 ≫か。

 もし、このフレーズの傲慢さが判らないのであれば、それも問題です。

 そもそも、人が生きていくうえでは、助け合うのが基本です。

 人同士に限りません。

 今、この瞬間も、誰もが例外なく、例えば腸内ではビフィズス菌をはじめさまざまな生命が働いてくれています。

 そのおかげで、自分が生きている意識を1年に一度ぐらいは感じてみてもバチはあたりません。

 その助け合いを、なぜ申し訳ないと思うのでしょうか?

 もしそうであれば、ビフィズス菌にさえも申し訳ないとでも思っているのでしょうか?

 違いますよね!?

 それは、助け合いは常に双方向で成長する機会への見失いです。

 だから、年老いた親御様も、お世話をしようとする子も、理性を伸ばす機会を失います。

 もちろん、ビフィズス菌に助けられているから生きている、そのことさえも判らないのです。

 だって、ビフィズス菌に助けられるのは申し訳ないんですよね!?

 申し訳ないのであれば、直ちに死ぬしかないじゃないですか。

 だから申し訳ないというのは、謙虚さではなく、傲慢な意識なのです。

 ≪ 介護を必要としない介護 ≫を実現する上で、介護の意味をキチンと看破する。

 この看破があってこそ、最期まで介護を必要としない、親と子と力を合わせて生活していく家庭が出来るのです。

 20世紀の頃と比べて、年老いた親御様を介護する環境は様変わりしました。

 認知症もボケや、痴呆と言われていた時代で、人権なども無視されがちで、収容施設では身体拘束や、暴力があった歴史があります。

 一方で、ご家族の中で、親も子も、お互いに支えあいながら生活しているご家庭も非常に多かった。

 ≪ 介護を必要としない介護 ≫を実現する上は、過去の良かったところ、悪かったところもつぶさに観察して活かしていきます。

 まず、親御様は、子に介護されるのを申し訳ないと思う必要はありません。

 持つべき大事な意識のありようは、≪ 堂々と介護される ≫、このように思ってください。

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