認知症でも留守番は頼めるのか?

 結論から申し上げると、難しい。私の在宅介護では無理でした。

 在宅介護のある暮らしが軌道に乗るまでには、さまざまな失敗を乗越えます。その一つに、どこまで母に一人で留守番をお願いできるのか、という課題が生じました。

 例えば、大雪が降り、帰宅困難となって家内を夜に迎えにいかなくてはいけない状況がありました。

 時間にしておよそ30分程度ですが、この程度の時間であれば問題なく留守番はお願いできました。

 しかし、半日、一日と留守番をお願いすると、さまざまなアクシデントが伴います。

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何もすることが無い

 在宅介護で母と家内、そして私の3人で同居をスタートして判ってくるのですが、母にお願いして助かることは数多くありました。

 例えば、洗濯物を畳んでおいてとお願いすると丁寧にやってくれます。

 在宅介護で、役割が大切というのはよく言われるフレーズですし、大事な取組です。

 しかし、これは家族のメンツが揃って成り立ちます。

 逆に言えば、母一人で家にいるだけだと、特段しなければならないという事象が無いのです。

 もちろん、家事の中からやるべきをみつけてやるというのが自然かもしれません。

 ただ、そうは言っても、そのアクションは難しいのです。

 一般論として、やったはいいけれども、他の家族に対して有難迷惑になって、かえって仕事が増えてしまうという事態にもなりかねません。

 そう簡単ではないのです。

 ですから、母をひとりで留守番をしてもらっていても、母にしてみれば手持ち無沙汰になるのです。

来客に出たらセコムの人が来宅した

 ある日、母に一人で留守番をお願いして、家内も私もそれぞれ外出したときがありました。

 すると、セコムから電話がかかってきたのです。

 セコムの電話口からは、私の自宅から緊急の通報が入ったとのこと。

 初めての経験なので、びっくりして外出先から戻ると母とセコムの警備の方がいらっしゃいます。

 在宅介護の場所に選んだマンションには、インターフォンで緊急時にセコムを呼び出せるようになっていました。

 母曰く、来客があったらしいのですが、その際におそらく緊急のボタンを押したのでしょう。

 セコムの警備の方が駆けつけてくれたことがあります。

 それ以来ですね、母を一人で留守番させるのはムリだと判断したのは。

 確かに、最近のインターフォンの操作は簡単ではありません。

 しっかりと操作を覚えないと、誰でもこのようなアクシデントは招くでしょう。

 ましてや、認知症を患っていれば、なおさらのことです。

最初から諦めなかった

 認知症を患っているのだから、ひとりで留守番なんてムリ。

 徘徊でもされたら行方不明になる危険性がありますから、その考えはもっともなのです。

 実際に、留守番をお願いして帰宅したら母が居なかったこともあります。

 非常に焦りましたが、隣に暮らす私の旧友のお母さんのところに遊びに行っていたのが判り、胸をなでおろした経験もあります。

 確かに危険が伴うので、そのしきい値は、ご家庭それぞれだと思います。

 ただ、何が出来て、何が出来なくなったのか。

 出来なくなったとすれば、その理由は何か。

 ここは突き止めなければ、どこを支援する必要があって、どれが支援する必要がないのか。

 実際にやってみて失敗してみなければ、その見極めが出来ないだろう、という立場を取り続けました。

 認知症を患っている親に留守番をお願いするのは、さまざまなリスクが伴います。

 火事、水道が出っぱなし、冷蔵庫が開けっ放し、トイレが汚物で汚れまくる・・・。

 ご家庭によって、生じる問題はさまざまなはずです。

それでも、やはりいろいろとチャレンジしてみて、出来るところ、出来ないところの線引きをつけるのは、その後の在宅介護のある生活の品質向上の基礎になっています。

 認知症を患っていたとしても、欠かすことのできない大事な家族の一員ですから。

 出来るところは、精一杯、頑張ってもらいたかったのです。

 在宅介護をさせてもらった母は、認知症を患ったとはいえ、前向きで明るい性格でした。

 もし、仮に認知症患者扱いをして、どうせ何もできないだろうから、何もやらせないような介護をしていれば、前向きで明るい性格も塞ぎこんでいたかもしれません。

 家族の中で何か役割と求めたとしても、前向きで明るい性格であるというだけでも十分にお役目を果たしてくれているのですから、それを活かす取り組みをしなければいけません。

 それが出来るところと出来ないところの見極めです。失敗して余計な仕事が増えることもありますが、そのチャレンジに意味があり、家族にとって意味と価値がある、というのが私の考えです。

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