先日も、高齢者介護施設の入居者が、退職した20代の職員に殺害される事件が起こりました。
亡くなられた方々のご冥福を祈るばかりですが、なぜ、このような痛ましい事件が起こるのか?また、自分の親御様を預けている施設では、このような事件は生じないと言い切れそうですか?
そのような悲しみをさけるために、実母の在宅介護で実践してきた取組を紹介しましょう。
想像力を働かせてください
幸せを感じられる日々を過ごせているのであれば、何よりですが、そのような日々にいながら、地球のどこか別の地域では、罪のない人が殺されたり、拷問にあったりする現実があるのですが、それを想像しろというのはムリですね。
もう少し、身近な例を出しましょう。
ご自分の両親、想像できなければ、祖父や祖母でも構いませんが、高齢者介護施設に預けなければいけない状況になったとしましょう。
施設に入る両親なり、祖父母らの気持ちを想像できそうですか?
つまり、自分が、自分事として、アリアリと高齢者施設に入所する現実を想像して欲しいのです。
できないでしょ?
できるわけないのです。
嫌なのですから。
例えば、独裁国家のように、政府の悪口を言って、誰かにチクられて、矯正施設に収容されるのだって、想像したくないですよね。
そんなの嫌!、なのですから。
嫌なシチュエーションは、誰も想像できないのではなく、したくないのです。
その嫌なシチュエーションに高齢者施設への入所というのも含まれます。
もっと想像力を働かせてください
では、あなたが想像できない状況下にある高齢者施設では、そこで働く人がいらっしゃいます。
そこで働く人の中に、倫理観、道徳心が健全で、思いやりある人がいらっしゃったとします。
その働く人は、施設を利用する人の気持ちをよく知っています。
「誰もがすき好んで、ここに来たいわけでは無い。」
ですから、その働く人は、利用する高齢者の気持ちをよく汲んで差し上げて、日常のお世話をしてあげます。
利用する高齢者も、その働く人なら気持ちを判ってくれると心で感じて、信頼関係も日々、高まっていきます。
それは、ご高齢の利用者の抱える気持ちから発せられる言葉に耳を傾け、寄添う日々です。
さて、ここで問題です。
あなたの親御様が利用する施設で働く人を思い浮かべてみてください。
そのような姿勢を貫ける人はいらっしゃいますか?
ハッキリと言いましょう。
20代そこそこで、福祉の学校を卒業したからと言って、このようなハイレベルな人間関係を構築できると考えるはムリがあります。
しかし、介護で最も重要とされるのは、ハイレベルな人間関係構築力です。
高齢者を入浴させるための介護スキルは大事ですが、そのスキルは、人間関係が正常に構築されて初めて発揮されます。
信頼関係のある人間関係がなければ、介護サービスは成り立ちません。
信頼関係が成り立たない人同士の間柄で、下着を脱げますか?
排泄介助ができますか?
良い介護サービスを受けたいならそれ以上の在宅介護を実践する
実母が認知症を患い、介護サービスを初めて受けたころは右も、左もよく判りませんでした。
しかし、1カ月、2カ月とデイサービス施設とお付き合いしていて、そこで働く人の姿勢もよく見えてくるようになります。
結論から、先に言えば、もし良質の介護サービスを受けたいのであれば、在宅介護では、それ以上の介護の実践をする。
これに尽きます。
そして、その姿勢をありのままに介護施設で働く方々に示し、伝えます。
要は、自分の年老いた親を丁重に、非常に大事にしている日常が私の家にある。
これを、キチンと示す必要があります。
示すといっても、介護に従事する人間をご家庭に招き入れて見せろというものではありません。
例えば、自分の親への接し方がありますね。
介護サービスを提供するスタッフは、家族の私生活も若干、入り込みますから、その様子を伺い知ります。
そのとき、乱暴な言葉遣いをして親に接しているならば、その態度に感化され、介護サービスを提供するスタッフも、この高齢者には特段、丁重に扱わなくていいんだという気持ちになります。
一方で、年老いた親に対して敬う言葉遣い、姿勢で在宅介護しているのが日常だったとしましょう。
その家族の日常を垣間見た介護サービスを提供するスタッフは、無下には絶対にできないと思います。
このように、介護サービスに従事するスタッフは、何もその施設だけで教育されるわけではありません。
むしろ、在宅介護が実践されている家庭の現状を垣間見て、その様子から受ける影響力のほうが実は大きいのです。
ご家庭の在宅介護の状況は、介護サービスに従事するスタッフに影響します。これは、あまり知られていません。というより、意識しているところも少ないでしょう。
また、ご家庭の在宅介護の状況が全く影響しない施設は、独りよがりなところで、自分たちのサービスの押し付けになりがちです。
特に、独居の高齢者への介護サービスに対して、誰が文句を言うと思いますか?日本人であれば、一般的にサービスを受けている高齢者が積極的にクレームを伝えられる立場にはないのです。施設に世話になっているご高齢の方が、いろいろとクレームを伝えたら、そこで働く人は、どのような姿勢をとるのか。
それは少しの想像力で察しがつくはずです。